キスをしよう

 じっ、と見ていたら、じっと見返された。
 恐らく言いたいことなんて見透かされてる。それなのに何も言わずにただ面白そうに口の端をあげて、言葉を待っているところを見ると、自分で要求しないとダメだということ。

だから、ふっと笑顔を浮かべて言った。

 「一口チョウダイ!」

 片言で要求したら、苦笑された。自分のスプーンでカイの手の中にあるチョコミントのアイスを貰おうと手を伸ばしたら、さっと頭上に高く掲げられる。

 「ちょっ、カイ君。そういうことしちゃうんですか?」
 「しちゃいますねー。欲しいんなら、」

 にやり、と笑みを浮かべる姿にぎくりと嫌な予感が背筋を走る。

 「口移しで取ってみな」

 そう言って、アイスを一口すくって自分の舌の上に置くとまったく悪気のない、でも意地の悪い笑みを広げた。

 「なっ、……じゃあいらない」
 ぷいっとそっぽを向くと、少し頭上から苦笑が零れてくる。だけど、懲りないカイは更に続けた。

 「ふーん。それなら、おまえのアイスを俺に口移しで食べさせるのとどっちがいい?」

 ぼっと、自分の頬が熱を持って、真っ赤になるのがわかる。どうやら、思いついてしまった以上は、目的に達するまで諦めるつもりはないみたいで。そんな羞恥極まりないことできますかって、怒鳴ろうとしたところで、やたら真剣な目を向けられた。

 「 ―― こういう機会でもないと、おまえからはしてくれないよな」
『キス』と声にされずに言われて、むぅと頬を膨らませる。
そんなことないよ、と言おうとしたけど振り返っても、自分からなどしたことがないのもまた、事実。

 「おいしいぜ、チョコミント」

 眩暈を起こしそうな美貌に甘い笑みを浮かべてそう言われてしまえば、抵抗は出来なかった。
だけど、相手の策略に乗るのも悔しくて、問答無用でぐいっとカイの肩を掴んで引き寄せて、口付けた。

 爽やかミントの味はすでに消えかかっていて、残っていたのはひんやり冷たい唇と、甘いチョコの一欠けら。







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