朝の光が眩しくて、うっすらと瞼を持ち上げると、目の前には優の顔。美女、というには程遠いが、可愛らしい顔つきをしている。最も、好きになったのは顔じゃないからどうでもいいが。好意を持ったまっすぐな黒い瞳は今もまだ、閉じられたまま。
「うーん、昨日。ヤリ過ぎちゃいましたか」
どちらかと言えば、早起きするのは優のほうで。それを腕の中に捕まえて起こさないようにするのが日課。だけど、昨夜はどうも感傷に浸ってしまった優に現実を思い知らせるため、頑張った。そんなことを言えば、頑張らなくていいっと顔を真っ赤にして怒鳴られること間違いなしだが、まあ、頑張った。
俺もまだまだ、と笑いながら、やっぱり熟睡中の優を抱き締めて、もう少し眠ろうかと目を閉じようとその瞬間、唐突にぱっちりと優の目が開いた。
「おわっ。おまえ、なんだよ。いきなり。びっくりするだろ」
「……おはようございます。カイさん」
優の口から飛び出てきた敬語に目を瞠る。なんだ、まだ寝ぼけてるのか、とからかいそうになるのを遮って、優はふわりと微笑んだ。
「 ―――― なんちゃって」
急な笑顔に戸惑っていると、そう声がして、どさっと顔面に枕を押しあてられた。
「うわっ…な…っ?!」
「やった、初勝利!」
いきなりのことで焦っているとそう声がして、腕の中からするりと優が抜け出し、ベッドから降りようとしていて ――― 。
「甘い」
問答無用で、腕を掴み、引き戻した。
「俺ってば、反射神経まで優れてるなー」
ニヤニヤと笑いながら言うと、どさりっ、とベッドの上に押し倒され、戻された優は睨みつけてきた。
「いやーっ。起きるのーっ!」
「いやーっ。起きませーん!」
抵抗しようとする身体をぴったり動くことが出来ないように抑え付けて、ばかーっと怒鳴ろうとする口を塞いでやった。
「……もう1ラウンドする?」
「大人しく寝るだけなら、付き合います」
むぅと頬を膨らませて最大限の譲歩と突き出してくる優の髪を、くしゃりと撫でて、「んーじゃあ。起きてからもう1ラウンドな」と耳元で囁いて文句を聞く前に、再び意識を眠りの中に戻していった。
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