今にも秋の身体に止めを刺そうとしていた高魔は、驚きに声を失った。
「なっ、……なにっ?!」
「なんだよっ?!」
周囲で見ていた高魔も思わず息を呑む。
倒れている秋から眩しいほどの光が溢れ出し、高魔の目の中へ射し込んでいく。
「うわぁ……っ!」
その光をまともに浴びた高魔は、一瞬にして砂に変わってしまい、さらさらと消えていった。光の眩さに、顔を腕で覆っていた高魔は呆然と隣に言葉をかける。
「怜悧(れいり)……何が起こったんだ?」
「さあ、僕にもなんだかわからないよ……。だけど、紫水(しすい)が殺されたことは確かみたいだね」
マントで顔を覆っていた怜悧と呼ばれた高魔は、ぱさり、とマントを外して地面に落とす。
ふと視線を向けると、地面に倒れていた秋がゆっくりと立ち上がっていく。高魔たちは身構えながら、互いに言い合う。
「あいつが滅ぼされたなら、次は俺の番だぜ」
「なに言ってんだよ、丁斬(ていき)。僕が先に決まってる」
睨み合ううちに、仕方ないとばかりに怜悧が肩を竦めて、提案を持ち出す。
「それなら、同時に仕掛けて仕留めたほうが勝ちということにしようよ」
丁斬はニヤリと唇の端を持ち上げて頷いた。その一瞬で、二人は動く。
( ――― この溢れてくる光はなんだろう?)
秋は身に纏う光を呆然と見ていた。
さっきまで気を失っていたことが嘘のように、秋の身体中に力がみなぎっていた。不意に首につけていた剣の首飾りがきらり、と輝いて鞘から外れた。ゆっくりと秋の手の平に落ちていく。すぐにそれは大きく変化して、秋の手の平に納まった。
「これはっ……?!」
秋の纏っていた光が、剣の中へ吸収されていく。
手に馴染んだその感触に、秋は剣の柄を両手で強く握った。途端、刀身から光の渦が放出され、秋と高魔たちを巻き込んで森の一部を全て包み込んだ。
目の前に光景に、砂霧は息を呑んだ。
「……いったい、何が……」
信じられずに、呆然と呟く。砂霧は思わず目を疑った。
秋の気配を探っているうちに、森から一瞬だけ光が溢れてきて、何事かと思って来てみればそこには秋ひとりがうつ伏せに倒れていた。秋の周囲では、まるで火事でも起きたように樹が焼け焦げている。
注意しながら秋の傍に降り立つと、人型の焦げ痕が2つあるのに気づいた。残っている黒炭にふっと、手をかざす。見覚えのある高魔の顔が脳裏に浮かんだ。
「……これは、怜悧と、丁斬? ……まさか」
そういえば、最初に感じていた森の番人である紫水の気配も消えている。
(秋さまが倒したというのだろうか ――― ?)
高魔ひとりなら、いくら「魔」の空間の森の番人である紫水とはいえ、秋さまが勝つことは予測できていた。だが、怜悧と丁斬も同時にというのは ――― 。
疑問に思いながらも、砂霧はとりあえず倒れている秋を抱えてその場を離れた。