「神の元にいくって……正気ですか?!」
いつも冷静を自負しているウリエルが声を荒げて目の前の少女に訊いた。
見回すと、扉の横の壁に寄りかかって立っているラファエルも椅子に無造作に座っているミカエルの顔も驚きに染まっている。
それでも、セラはしっかりと頷いた。
「全ての始まりは神だと思う。だから、会いに行く」
会いに行って、確かめたいから。
そう言って、セラは微笑んだ。
その微笑みに固い決意を感じ取って、ラファエルは軽く首を横に振ると、肩を竦めて言った。
「僕たちも行くよ」
ミカエルのこめかみがぴくり、と動く。
「ラファエル……たちってなんだ。たちって!」
「僕とミカちゃん」
あっさりと言うラファエルに椅子から立ち上がったミカエルは嫌そうに顔を顰めた。
「勝手に決めンな!」
「ふーん。ミカちゃんは大切な僕がどうなってもいいんだ。あー、そう。仲間想いのミカちゃんだと思ってたけど、僕は買いかぶってたんだ。へぇー」
次第にミカエルの眉根がつり上がっていく。二人のやり取りを慌てて止めようとしたセラだったが、駄目押しとばかりのラファエルの声に遮られた。
「まあ、無理に一緒にとは言わないよ?」
「行けばいいんだろっ、行けばっ!」
チッ、と舌打ちして、不貞腐れたような素振りでミカエルは椅子に座りなおした。
「素直じゃないね」
やれやれ、とばかりに肩を竦めるラファエルはちらりとセラを向いて、ウィンクを投げた。
「私も行きますよ、もちろん」
声の上がったところを向くと、ウリエルが柔らかい笑みをセラに向けていた。
セラは戸惑ったように言う。
「気持ちは嬉しいけど……でも、なにが起こるかわからないよ。皆を巻き込むわけには……」
「カン違いすンじゃねえ」
セラを射抜くような目で見てミカエルが遮った。
「これは俺たちの問題でもあるんだ」
ミカエルの言葉を引き取って、ラファエルが言う。
「神の意向、これからの天界の動向。行方。アレクシエルがいない今、それらを把握するのは僕らの役目でもあるしね」
更にウリエルが、かけていたサングラスを自ら取って、にっこりと笑いながら続けた。
「そうですよ。だからたとえ、セラ様がただセイ君に会いたくて向かうのだとしても、我々は神の意思を自分たちで確認すべきために向かうのです」
ふと視線を動かしたラファエルが呆れた顔をする。
ぼそっ、と隣にいるミカエルに小声で言った。
「……ウリエル、自分で言ってグラサン潰してるよ」
「やせ我慢か」
同じように声を潜めて、ミカエルが応じた。
「ラファエル、ミカエル……何か言いましたか?」
静かな声で言い放ちながら、ウリエルは手の平をパッ、と広げた。
ぱらぱらと……。
残骸に成り果てたサングラスが絨毯へと落ちていく。
その様に顔を青く染めて、ブルブルと二人は首を横に振った。
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